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金沢大学角間キャンパスで働く准教授のブログです.大学や金沢での生活や,その他もろもろです.
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土木学会ウェブページの論説に「変化する時代の土木のあり方」という記事が公開されました.記事はこちらから.

失礼ながら文章はあまり上手ではありませんでしたが,とても大事なことが書かれているなぁと思いました.
どちらかというと哲学的な内容でしたが,土木技術者は技術を駆使できれば良いだけではなく,どのような価値観に基づいてその技術を活用し,国土を作っていくのかというビジョンを持っていなければいけないと思っているので,土木に関わる方々には是非一度読んで考えて頂きたいと思いました.

現在の土木系の学科では技術的なことを教えることに精一杯で,自分たちが学ぶ技術の社会でのあり方を教わることはほとんどないと思いますが,人々の暮らしを支える土木技術については,そうしたことを教える機会があってしかるべきではないかと思います.

私が学生だったときも特別な講義はなく,色々な先生の講義の端々からなんとなく社会での土木技術のあり方や,技術者としてのあり方などを感じたり考えたりしていたように思います.私も講義の中で,機会があれば哲学的なこともちょこっと話したりしています(けっこう照れくさいものですが).
そうしたことがどのくらい学生に伝わるかわかりませんが,100人いたら数人にでも何か感じてもらえればそれで良いかと思います.

最近は大規模事業による負の側面が先行しがちな土木ですが,技術の持つ意味や社会のあり方を考える人が少しでも増えて,その人たちによって新しい国づくりが実現されていけば,土木の価値が再評価されるのではないかと思います.自分の活動もそうしたことにつながればと思いますし,それを実現する人材の育成に少しでも貢献できればと願うばかりです.
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先週から今学期の講義が始まりました.昨年度の講義資料があるものの,決して満足なものではないのでそれなりに大幅な変更を加えつつあくせくやっています.多少なりとも学生が学ぶことの多い講義になればよいのですが.

先日紹介したサイエンスポータルというサイトで,山形大学の先生が講義に関する記事を書いていて,いろいろ考えさせられる内容でした(記事はこちら).

非常にざっくり要約すると,大学全入時代を迎え,大学教育も変化が必要であると.設立当初の大学は限られた学生に高度な知識を与え,エリートを育てることが目標であったかもしれませんが,大学大衆化が現実となったいま,その目標も異なって然るべきで.「大学卒」という履歴は特別な意味をもたず,何を学び身につけたかが大事で,学生もそうなりつつあるそうです.

私なりに理解した限りでは,21世紀の知識基盤社会(と言われているそうです)においては,社会の発展の基盤になる知識と考える力を誰もが持つ必要があり,それを身につけさせるのが大学のひとつの役割であるのかなと思いました.知識と考える力の底上げというのでしょうか.聞こえは良くないかもしれませんが,大学大衆化はそれを現実にするための社会条件が整ったと考えることもできるかもしれません.あとは大学教員がそれに応え,学生のみなさんもがんばって学んでくれれば,というところでしょう.

とはいえそれが簡単ではないわけで.我々教員も悩みながら講義の改善に取り組んで,時には当然失敗もしますし.学生も睡魔に負けてしまうこともしばしばですし.学生にがんばりを強要することはできませんから,気付いている教員が態度と講義内容で,少しずつ伝えていくしかないんでしょうかね.
大学としてはやや耳の痛い(?)話題.Yomiuri Onlineより.
国からの借入金などを元に、大学生などに奨学金の貸与事業を行う独立行政法人「日本学生支援機構」で、卒業生の住所が分からなくなり、計約132億円が回収不能になっていることが、会計検査院の調べで分かった。検査院は同機構に対し、「出身大学にも協力を求め、住所を把握する努力をするべきだ」と改善を求めた。(Yomiuri Onlineより)
回収不能は132億円ですが,記事によると滞納は2253億円に上るそうです.私も学部生の一時期と博士課程の頃に奨学金を受けていて,現在も返済していますが,月額の返済額はどうにもならないほど大きいわけではないし,食うに困るという状況でないのであればきちんと返済すべきです.

奨学金の踏み倒しは私が学生の頃から問題だったようですし,もっと前からあったかもしれません.だからといって許されるわけではありません.記事の感じだと,借主の住所等を把握していない側に問題があるということですが,借りる方も責められてしかるべきだと思います.もっとも利益を求めない機構の体質も問題視されているのかもしれませんが.自身の利益はなくとも,社会的には大きな損失ですから,がんばって回収して欲しいものです.場合によっては法的処置も辞さないとかで良いのではないでしょうか.

返還されたお金は次の学生の奨学金となるわけですし,それによって学びたい意欲のある優秀な学生が育っていくことを考えれば,単に機構まかせでなく,大学としても協力すべきではないかと思います.

本日,私が所属する理工学域のFDシンポジウムというのが開催されました.
FDというのはFuculty Developmentの略で,日本語に訳すと教育改善ということのようです.

何人かの先生方からの報告や紹介などがあり,中でも日本と海外のFDに関するアンケート結果が興味深かったです.広島大学の有本先生の研究結果が紹介されていて

・学士課程教育がうまくいっている:日本11%,米国52%
・改善や活性化の必要性を感じる割合:日本91%,米国10%
・FDにより教員の資質・能力が高まった:日本9%,米国46%

などなどです.私は米国の大学で教育を受けたことがないのでわかりませんが,それほど日本と差があるのでしょうか.もしそうだとしたら,ちょっとまずいように思いますが,現状はそう悲観するほどのものではないように思います.改善や活性化の必要性を感じるのは,日本の大学教員の問題意識や目標のレベルが高く,現状に満足できないためではないのかなぁとも思います.資質や能力の高まりを容易に感じないのも,そういう原因もあるのではないかと思います.米国で自己評価が高いのは,自分たちの成果を積極的にアピールするという文化も多少影響を与えているのではないかと思います.

とはいえ,私も今学期担当した講義を振り返って,やはり講義の内容ややり方を工夫しなければと痛感したので,まだまだ教育の質を上げていかなければいけないと思っています.

会の終わりの挨拶で,教育の質と効果の向上は大事だが,講義内容を減らし,わかりやすくして理解度をあげることは望ましくないといったお言葉がありました.どれだけ学生に背を向けながら伝えられるかが大事であるかとのことでした.
確かに,講義などでわからないからこそ自分から問題に向き合い,考え,探究するのであって,すべてわかったら自ら学ぶモチベーションは起こりません.結局はうまく動機付けができるかどうか,その動機によって学習・研究意欲が湧いたかどうかが大事なところでしょう.
まったくわからなかったらやる気が起きませんし,わかりすぎるとがんばって学ばなくても大丈夫と思ってしまうかもしれません.その辺が難しいところです.

また,大学に入りたての頃の学生の目は輝いているのに,それが少しずつ失われてしまうことがあるのは教員の側にも責任があるとのお話もありました(目が輝いているのは学問への期待だけではないかもしれませんが).
私も大学に入った当初は学習意欲があったように思いますが,学部の4年間はろくに勉強もしませんでした.その原因のひとつは講義がよーわからん,ということがあったかもしれません.常に喜びを持ち続けて大学で学んでもらえるように教員として努力を怠らないようにしたいと思います.

金沢大学への異動してきた際に新しいPCを購入して,その使用開始を機にGoogleデスクトップを使い始めました.数あるガジェット(ツールみたいなものです)の中から,RSSリーダーも入れてあって,国交省河川局のニュースなどを購読しています.

で,本日の河川局RSSで「小中学校における土砂災害防止教育に関する懇談会」のお知らせがありました(詳しくはこちら).
要は,豪雨や地震の際の土砂災害を減らすには子供の頃からの教育が大事ですということで,その推進のための話し合いをしましょうということです.

個々人が災害の知識を有して,しっかり対応できるようになるというのは良いことですし,土木工事の必要性を認識してもらうことにもつながると思うので,歓迎すべきことですが,なぜ土砂災害に限ったことなのか不思議です.
もちろん,すべての災害に関する教育を議論し始めたら,たくさんの専門家の色々な意見で収集がつかなくなりそうですが,河川局のとりまとめであれば,水害も含めたものにすれば良いのではないかと思います.洪水などにより水害と土砂災害をひとつの場で議論するのも収拾できないと判断した結果かもしれませんが.

今回は土砂災害に特化したものということで進めて頂きたいですが,ぜひ水害防止に関しても同様の活動があると良いと思います.
水害に関しては,河川を教育の場としてNPOなどが川遊びなどを合わせた啓発活動をしているかもしれませんが,参加者も限られると思いますし,行政も協力しながら学校を舞台に活動できればより良い効果が期待できるのではないでしょうか.

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