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金沢大学角間キャンパスで働く准教授のブログです.大学や金沢での生活や,その他もろもろです.
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今回の原発事故が起きた背景には,個々あるいは部分部分の技術は最高のレベルのものにも関わらず全体を見通すことができないがために避けられなかったのではないかという考察がサイエンスポータルにて紹介されています(こちら).

個別の改善・改良を進める部分最適化が進行しすぎると,全体として非効率になり得ることがある,ということから上記のような考察に至っているわけですが,日本では部分最適化を進める傾向があるようで,社会としての非効率にもそうしたことが影響していると指摘しています.

一部分だけが成果を出しても,共同すべき他との歩調が合わなければ無駄がでるので,早く進んでいるところはさぼったりすれば全体として最適化が図られるということがあるようです.と考えると,日本人の勤勉さや真面目さといったものも関係しているのかなぁとも思ったりします.

部分最適が進められる日本に対して,全体最適化が図られている地域として北欧が触れられており,大和総研の高橋正明氏のコラムも紹介されていて,こちらもなかなか面白いです.

もちろん努力は必要なわけですが,時として無駄な努力はしないほうが全体としてはうまくいくということがあることを知る,あるいは考えるということも必要なのかもしれません.少なくとも,何事かにおいて全体を統括する立場にある人には,そうした考え方があることを知っておく必要があるのではないかと思いました.
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九州大学・小松利光教授の記事が震災復興に関連した話題がサイエンスポータルに寄稿されました(こちら).

震災復興について,「地域・地方の重要性」や「一元的な危機管理組織の構築」を述べていますが,それに加えて指揮系統がしっかりした組織の有効性を述べています.確かに,報道などをみても自衛隊や消防など確固たる組織力を持ち,しっかりとした訓練をしている人々の活躍が目を引きます.それに比べて何が専門なのかわからない政治家の頼りなさといったら.

結局は,普段から専門的な訓練を受けたプロフェッショナルが有事には不可欠だということだと思います.同様のことが小松氏の記事にも書かれており,少数でも良いから一元的な危機管理組織を形作る専従職員を置くべきと述べられています.

私は自治体の仕事に精通しているわけではないので間違っているかもしれませんが,防災課のようなところの職員が本当にプロフェッショナルかというと,必ずしもそうではないのではないかと思います.お役所では数年単位で部署が変わるのが一般的なので,防災担当の人もどんどん入れ替わっているのではないかと思います.しかし,それで本当のプロフェッショナルが育つのでしょうか.

確かに,起こるかどうかわからない災害のために職員を雇用するのは無駄かもしれませんが,地震や台風といった自然災害が頻発する国に暮らしていることを思えば,5年に一人くらいでも良いから専従枠で採用してとにかく何でもできる人を育てることも考える必要があるのではないかと思います.もちろん少人数で大災害に対応できるわけはありませんから,自衛隊や消防とのパイプ役として動けるという能力を育成することも考えられるかと思います.

町村レベルでは難しいにせよ,県のレベルではそうした専門職の雇用と育成を真剣に考えて良いと思います.平時には浮いた存在になってしまうかもしれませんが,災害時に力を発揮することが期待されているのですから,そこで仕事ができれば文句はないはずです.災害がないときには,起こり得る災害について調べたり,より良い対策等を検討するということに集中でき,いざというときに迅速に対応できるかもしれませんし.

そんな仕事ができたら,やりがいもありそうだし,希望者もいたりするのではないかと思ったりするんですが,どうですかね.

震災から一か月が経ち,被害が深刻な地域の復旧・復興だけでなく,様々な議論がなされるようになってきました.その中で東京が何らかの原因で機能不全となった場合の代替機能を果たす「副首都」建設が議論されているとのこと.
東日本大震災を受けて、首都・東京が大災害やテロで危機に陥った場合に、代替機能を果たす「副首都」の建設を図ろうとする機運が、与野党間で高まってきた。超党派の「危機管理都市(NEMIC)推進議員連盟」(会長・石井一民主党副代表)は13日、国会内で会合を開催。政治・経済の中枢機関が集中する東京の機能がまひすれば、日本全体が大混乱に陥るのは必至で、議連は「東京直下型大地震もいつ起きるか分からない」などとして、年内にも副首都建設に着手すべく検討を急ぐ。(MSN産経ニュースより)
既に候補地も挙げられているようですが,何だか話が進むのが早すぎやしないかという気もします.これまでも既に調査がなされていて,それを実現に動かす必要性が高まったとかいうことがあるのかもしれませんが,あまり性急な結論を出すのもどうかと思います.

場所だけ決まってもどうにもならないわけで,どのようになインフラや機能が必要かということを十分吟味し,あらゆる事態を想定して機能が果たせるかどうかシミュレーションし,議論に議論を重ねる必要があると思います,海外に事例あるいは似たような考えで国づくりを行っているところはあるのかということも参考になると思います.

公共事業を増やすのが目的だろうという声もあるようですが,地震大国といわれる日本で大きな地震によって首都が被害を受ける可能性を無視してはいけないと考えることは決して誤りではないと思いますし,そのための何らかの策を講じることは至極当然のことではないかと思います,

しかし,十分な検討や議論もなされないままでは,特定地域への利益誘導を目的ではないのかと勘繰られても仕方ないと思います.また,副首都がつくられ,機能を果たすには当然職員が必要となるわけで,公務員削減どころか増員されるかもしれず,組織維持が目的ではないのかという声も出てくるかもしれません.

間違っても自分の手柄にしようとかいう気持ちではなく,国を守るために十分な実効性を持ち,かつ最小限の投資で効率的な運用ができるような設計図を作ることに務めてほしいと思います.
サイエンスポータルにて,三菱総研理事長・小宮山宏氏の記者会見が記事として公開中(こちら).氏もメンバーとなってまとめた「日本の地域『新生』ビジョン」という提言へのリンクもあります.

記事(及び提言)では,今回の震災を教訓に日本社会を再生するには長期的な復興ビジョンが必要であり,それはコンクリートの大量投入であってはならないと述べられています.コンクリートの大量投入を支えとして,世界2位のGDPを誇るまでに成長したことは確かですが,同じ道を歩むことは再生につながらないということです.

記事の中で氏は,それぞれの時代に文明の先端を行く国があり,それにならって成長を続けて来たと述べています.そして,現在あるいは未来において文明の先端を行く国がどこになり得るのかはまだ見えていません.

この震災によって,私たちの暮らしは色々なことについて,惰性に従ってこれまでと同じ方向に進むことは許されない状況にあります.しかし,どう変化すれば良いのか見えている人はまだいないのではないかと思います.復興は急がれなければなりませんが,その過程でどう生きていくのかということもしっかりと考えられなければならないと思います.

記事の中ではエネルギー戦略の重要性が挙げられていますが,他の産業やその上に成り立つ商業,それらの中での生活の全てにおいて,新たな考え方が必要かもしれません.そして,それらを総合したものこそが文明に他ならず,我々は自ずと新しい文明を構築することを余儀なくされているのかもしれません.

どうすべきかはわかりません.ただ,来た道をなぞっていてはいけないようです.苦しいかもしれませんが,悩みながら,文明の先端へ.
震災地ではまだまだ様々な支援が必要とされ,そうした活動に直接関われないことでもどかしさを感じている方も多いようです.一方で,震災復興のためには普通の日常を送ることも大切だという意見も多くみられます.

被災した方々の気持ちを推し量ることは到底できませんが,直接的な支援に加えて2次災害的な経済の停滞を招かないためにも様々な活動を活性化して欲しいという声が被災地から聞こえてくるのは,直接的な支援に関われない人にとってはありがたいことといえるかと思います.

そうした声に応えるためには,それぞれが期待されている役割をきちんと果たすということが大事だと思います.そのことで,「この国は大丈夫」という安心感を与えることができるかもしれません.
スポーツ選手が「スポーツを通して勇気づけたい」といったりする姿には賛否両論あるかと思いますが,先日のサッカーのチャリティーマッチでゴールを決めたカズをみて,期待に応えること,当たり前のことが当たり前になされる状況にあるということを感じさせることも国を支えるには必要なことなのかもしれないと思いました(カズのゴールは「当たり前のこと」ではないかもしれませんが).

残念ながら今回の震災の中では,期待されている役割を果たせていない人々や機関の姿を目にすることもあるように感じます.それでは逆境にある人々の不安感,不信感が募るだけです.こうした緊急時だけでなく,平時から自分の果たすべき役割を認識し,それらが人々に期待されていることなのだということをきちんと自覚して取り組み,形にしていくことが,社会を安定化させるには重要ではないかと思います.
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