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以前紹介した「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の第一回会合の議事要旨が国交省より公開されました(こちら).
会議には河川工学を専門とする学識経験者や国交相を含む政策担当者が出席し,会議のあり方・進め方,今後の議論の方向性の大枠が議論されたようです.
会議の頻度や分科会を設けるかといった体勢に関してはこれから詳しく決められるようでした.国の治水対策を根本から変えるかもしれない会議ですし,ここでの方針が今後数十年の国づくりに様々な影響を及ぼすでしょうから,急がずにじっくりと議論をして欲しいと思います.また,最初からひとつの方向に議論が進まないように可能な限り広く意見を拾い上げる機会を設けて欲しいと思います.
最初の会合ということで議論の中で出された意見は総論的なものでしたが,いずれも治水対策とまちづくり・地域計画との連携の必要性を述べたものであるように思います.決して新しい考え方ではありませんが,とはいえこれまでは河道中心の治水方針を進めてきたことを考えると,従来からあった国土づくりのアイディアが実現されるようになるのではないかという感じがします.
まちづくり・地域づくりと併せて考えるとなると,地域の持つ特性を重視する必要がありますが,そもそも治水計画もその土地の地形や雨の降り方などを考慮し,地域毎にオーダーメイドで考える必要があるものですから,そういう意味では治水計画策定の中でさらにそれを深めることになるかと思います.
従来に比べ治水方策が多様化することで,技術者の選択肢が広がり,決定に至るまで悩むことも増えるかもしれませんが,技術者としてのやりがいは大きくなると思います(前にも書いたかもしれませんが).
上記議事要旨の公開に先立って,国交相から「『できるだけダムにたよらない治水』への政策転換に対する協力のお願い」という文書が公開されました(こちら).治水方針が転換することになれば社会の様々な部分に影響が出ることとなりますが,ぜひ理解して下さい,という趣旨のものですが,そんなに弱気にならなくても良いのではないかと思います.
技術者というものは社会的・技術的に正しいと思うことは,自信をもって取り組むものです.その親分が弱気では,技術者たちも自信を喪います.政治家というのは信念をもって仕事にのぞむべきものですから,やろうとすることには自信を持って強気で引っ張っていってくれないと,うまくいくものもいきません.大変とは思いますが,がんばってくださいよ.
参考資料の中の主な論点のひとつめに大々的に書かれているのが「ダム整備にたよらない方法を必ず含めて複数の治水対策を立案する」というものです.民主党政権の意向を受けてかな,と勘繰りたくもなりますが,そこから良い案が出てくれば歓迎ですから.当然のことながらポジティブに受け止めますよ.
加えて「これまでの評価軸に加え,時間的・財政的な制約等を加味した新たな評価軸を検討する」とあります.色々なところからの批判もありますし,国交省自身の反省もあってのことと思いますが,より良い河川行政の実現に近づくことと信じ,これまたポジティブに受け止めましょう.
ダムにたよらない,となるとその代わりに色々な治水手法が必要となりますが,この点に関しても治水対策案の主な例として挙げられています.どれも目新しいものではありませんが,それらを適材適所に組み合わせることによって,大きな治水効果を発揮することは可能なはずです.
その中には構造物の強化といったハード対策も含まれますが,土地利用に制限を与えるといったソフト対策や,遊水地のように越流を容認しつつ洪水被害を軽減するといったものも含まれています.今までにもこれらの対策は実施されているところもありますが,ダムによらず新たにこうした手法を取り入れる場合には,対象地域にいおいては新たな課題が生まれてくるかもしれません.
また,土地利用などに手を入れるためには河川行政だけでなく都市計画等の部署との連携も必要となり,はじめはスムーズな導入が図れるかどうか,やや心配です.
とはいえ,河川は河道内だけのものではなく,国土を流れることで地域を形成するものですから,本来は地域づくりと一体となって実施されるべきもので,総合的な地域・河川づくりを実現するための体制がようやくできるかもしれないということで,期待は膨らみます.
様々な手法を組み合わせて河川管理を実現するというのも,その流域にあったものを選び,適切に配置することが求められるので,河川技術者・土木技術者の技量が試されるという意味で,やりがいのある仕事になっていくのではないかと思います.
最初は大変なこともあると思いますが,これを機に土木技術者の活躍がさらに求められ,社会に貢献できるようになっていくことを期待したいと思います.
それによって流れの穏やかなところができていたので,生き物のためかなとも思いましたが,河道の蛇行具合からいってすぐに流されてしまうような気もします.もしそうした目的だとすると,およそ自然な流れとは違うのでいずれなくなって,目的は破たんするのではないかと思います.
そのうち北國新聞とかで話題になればと思います.
本日はもうひとつ.次期「ひまわり」の話題.
消滅の危機からは脱したようですが,やはり衛星打ち上げというのは大変なようで.コスト削減のために色々工夫しているようですが,私たちの生活を支える大切な社会基盤ですから,問題なく進んで欲しいです.日本の気象観測に欠かせない次期気象衛星「ひまわり」8、9号の開発・製造が進んでいる。気象庁は現行衛星に比べ大幅な性能アップを計画。事前予測が難しいゲリラ豪雨や竜巻の観測精度を大幅に向上させ、中国大陸から日本へ飛来する黄砂などの観測にも威力を発揮できるよう、平成22年度予算に整備費として約75億円を要求した。財源不足から一時は消滅の危機にあった次期衛星だけに、気象庁はコスト削減に知恵を絞るなど懸命の努力をしている。(MSN産経ニュースより)
政権交代後,八ツ場が何かと話題だったりしますが,国交相が再検証をするとか.同じくして従来の治水・利水のあり方を見直すそうです.asahi.comより.
前原誠司国土交通相は27日、ダム建設を前提とした従来の治水基準や、川から取水する権利(水利権)のあり方を見直す方針を明らかにした。近く有識者会議を発足させ、全国の河川に共通する見直しの新基準づくりに着手する。来年度予算の編成作業の中で、この新基準を個別事業にあてはめていく方針で、全国のダム計画に影響を与えることになる。 (asahi.comより)
記事では国交相がゲリラ豪雨対策で『1千年に1度』の洪水も想定していては,ダムを永遠に作り続けなければならないと語ったとありますが,気候変化に伴う豪雨の増加に対して,国交省はダムで対応するといっているわけではないんですがね.
昨年発表された答申やその資料でも,今後起こり得る豪雨に対しては従来の施設整備だけで治水を実現することは困難で,地域づくりとの一体化や危機管理といったソフト対応の重要性を述べおり,複数の方策で対応する方針に変わりつつあります.リスクは分散化した方が良いというのはもっともなことなので,そのオプションとしてダムの可能性もあることは理解しておく必要があると思います.
水利権に関しても,ダム建設に参加しない自治体が水利権をもたないことを見直す必要があるのではと述べたそうですが,受益者負担というか,水資源を使うならその開発コストを負担するのは自然なことと思いますが,それも変わっていくのでしょうか.
記事の見出しは「脱ダムへ全国共通基準」とありましたが,河川というのはひとつひとつ性格が異なるものですし,地域によって気候条件も違いますから,バシッと数値基準を与えることは難しいと思います.まぁ工夫次第では広く適用できるものもできるかもしれませんが.
こうした動きによって,これからの河川行政が大きく変わるかもしれませんが,そうなると影響は大きいですから,焦らずじっくり検討して頂きたいと思います.
治水の話題ついでに,今朝の某テレビ局のニュースで,100年とか200年確率の大雨に対する治水基準という話があって,「100年先のことより現状に対処すべきだ」とあるコメンテーターの方が発言されていましたが,100年確率の雨は100年後に降るわけではないんですが.真面目な顔でやや怒ったように発言されていましたが,ちゃんと理解もしないのに語気を強めるというのは,ちょっと.
長くなりましたが,河川の話題がほかにもあったので.ついでに.
不正取水問題で水利権を取り消されたJR東日本・信濃川発電所の宮中ダム(新潟県十日町市)の上流で、今年は遡上(そじょう)するアユとサケの数が例年の3倍程度に増えたことが、地元漁協などの調査でわかった。(Yomiuri Onlineより)
川に魚が戻ったことが取水をやめたことによるのかどうかは詳しい分析が必要とのことです.将来的にJR東日本が水利権を再取得するのかどうかわかりませんが,再度取水を開始するとしても運用次第では豊かな自然を維持できるのかもしれません.発電に水を使うのと河川生態を豊かにすることのどちらが大切か,判断は難しいかもしれませんが,次に取水がされるとしたら,きっと考慮されることでしょう.
「気候変化の適応ニュース(vol.6)」が配信され,台風9号による水害に関する記事や世界の水関連活動の紹介がされていましたが,国土交通省が局地的な大雨への対応するための政策として「100㍉/h安心プラン(仮称)」というものを策定・推進するとの話題がありました.
従来の河川整備の目安であった時間雨量50ミリを大きく上回るような局地的大雨による水害の軽減を図るために,ハード・ソフト両面から各地域の特性に応じた対策の実施に向けた活動で,新たなレーダ観測施設による高精度な情報の提供,河川・下水道施設や浸透設備の整備,避難訓練の実施などが挙げられていました.
これは8月31日に公表された国交省の「重点政策2009」の中の一つの政策で,「重点政策2009」では河川に限らず国土整備全般に関する今後の政策についての資料が公開されています.水害対策では,「100㍉/h安心プラン」の他に流域対策として調整池事業を都市部から全国に展開するとか,高潮対策としての港湾整備など色々書かれていました(重点政策はこちら).
先に述べたとおり,政策は多岐に渡っており,物流ネットワークの整備から地球環境問題への対応,観光立国の実現などなど,非常に幅広い活動が含まれています.また,概要の一番上の,うっかり見落としそうなところに「歴史的な転換期」と書かれていて,「本格的人口減少・高齢化社会の到来」「地球環境問題の深刻化」など書かれていますが,これを念頭にどのような国土整備をすべきか考えた結果なのだとしてみると,なるほどそうなっているかなぁという気がします.そのような意識のもとで国土づくりが進められようとしていることを知った上で我々研究者も研究に取り組む必要があるかもしれません.
非常に幅広い国交省の政策ですが,当然のことながら実際の事業は地域ごとに進められるわけですが,そうなってくると民主党のマニフェストも気になってくるところです.地域が主体となった行政を,といった時にこれら政策はどうなるのか.中央がやるべきこととして進めるのか.地域が望まないものは中央の事業だとしても拒否するのか.中央の政策ではあるが地域も協力するのか.
「重点政策2009」の本文の最後にある<重点政策の推進にあたっての視点>では,国と地方の関係についてもしっかりと書いてあって,国交省は国が果たすべき役割を重点的に担い,それ以外は出来る限り地方に委ねるとしています.その切り分けが実は難しいのでは,という気もしますが,きっと国交省と地方でうまくやってくれるのでしょう.政治から色々口を出されるのは両方にとって案外めいわくなことかもしれませんし.
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