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3日目.昨日のグループセッションでの議論の報告とまとめのパネルディスカッション.
報告からは気候変動・炭素循環・生物多様性の3つのグループは科学的な色合いが濃く,水災害・水資源のセッションは昨日の発表や議論にもあったように政策的対応への考慮も含まれるなど,やや色合いが異なって
いるように感じました.それだけ水分野は環境に関わる研究分野の中でも社会における実益の実現が求められているということに他ならないかと思います.
報告のあと,今回のシンポジムから出す提言の取りまとめに関する議論がありました.この辺は各グループや各国での取り組みの差や,GEO(Group on Earth Observation)およびGEOSS(Global Earth Observation System of Systems)への要望の違いがあるようで,色々な意見が出ていましたが,正直なところどうすることが最適なのかということは良くわからない感じでした.そういう難しいことは上の人たちが考えて調整してくれると思いますが.
ということでGEOSS-APは終了.今回受けた印象は,少なくとも出席者のレベルでは参加する国々の間で良いFriendshipが出来ているということでした.地球環境に関わる活動においては,各国での取り組みももちろん大切ですが国を超えた地域での取り組みが必要なこともあると思いますし,それが実現する土壌はあるレベルにおいては構築されつつあるように思います.この友好的な関係を今後も維持し,さらに実効性のあるものに育てていくような継続性のある活動が続けば良いのではと思います.
GEOSS-APは終了ですが,明日はAsian Water Cycle Initiative(AWCI)の会合.私も出席するので,あと一日,がんばります.
GEOSS-AP2日目.
本日は午前・午後ともグループにわかれてのセッション.私の研究に関係しそうなのは,水関連と気候変動のセッションのふたつがあったのですが,気候変動は主としてインドネシア周辺や熱帯域の話のようだったので,
結局Hydrometeorologival-Related Disaster and Water Resources Managementという水関連のグループのセッションにでました.
午前のセッションでは干ばつ・台風・氷河・温暖化適応策という4つの話題に関する前回の会合(2009年12月・東京)のまとめと,アジアの15カ国からの各国の気候変化の現状とそれらに対する適応策の報告がありました.適応策に関しては全ての国から報告があったわけではなく,まだ現状の把握や将来予測の検討などが必要という印象でした.
日本においては気候変化への適応策のあり方に関する答申が既に出されていますが,現在も新しい治水対策の方針が議論されている最中ですし,どこかの流域に関して具体的な適応策が決定され,進められているわけではないので,これからの課題だろうなと思います.個人的には,現段階では丁寧なアセスメントを進めることに重点がおかれるべきだと思いますし.
午後のセッションで,Asia-Pacific Water Forum(APWF)というものの紹介がありました.アジア太平洋域での持続可能な水管理に貢献するために創設されたもので,政策決定に近いところに対して様々な助言を行う集まりのようです.たぶん.
今回はGEOSSという地球観測コミュニティの会合ですが,それと水関連の政策決定者とをつなぐ活動をするということだと思います.3月末にAPWFの第一回会合が開催され,今回の水関連のグループの議論もそのインプットにもなるようですし.
また,シンガポールから参加された社会科学の研究者の方々から,研究コミュニティと政策決定との関わり方についての発表がありました.議論の中では,研究コミュニティは自分たちの専門的な言葉を政策決定者あるいは社会に理解可能な言葉として発信する必要があるとのことが言われました.おそらく新しい意見ではないと思いますが,その必要性が言われるということは,実際にはそのような土壌がまだ出来ていないということでしょう.
一般の人々向けの執筆活動は必ずしも研究コミュニティによって評価されないボランティア的な活動でインセンティブがないとのお話もありましたが,どうあるべきかについては難しいと思います.
社会からすれば,予算をもらっている研究者はその社会への還元として成果を説明するための努力もして然るべきだと考えるかもしれません.評価されるかどうかではなく,義務として取り組むべきだと.
しかし,そのための労力を論文執筆や予算申請書の作成に割けば評価される成果につながるかもしれないわけで,自ずからそちらに時間を割くようになると思います.社会への情報発信を怠ったからといってペナルティがあるわけではありませんし.
もちろん,研究者が自分の成果をわかりやすい形で広く発信することは専門でないにしても関心を持つ他の研究者に成果を知ってもらったり優秀な学生を獲得することにもつながるかもしれませんし,プラスの影響もあると思いますが.
議論の内容は温暖化政策に関するものだったので,すっかり脱線した形になってしまいましたが,まぁ思ったこととして記しておきます.
政策決定に科学的な知見を反映させることは,現在の地球環境問題を考えれば不可欠でしょう.かといって政策決定に関わる人々が専門的な論文を読んで理解するのは容易ではないと思います.
一方で地球環境関係の研究者にとっては,自分もその一員である社会のことを考えたり理解することは不可能ではないと思います.科学的な知見を政策に反映することが期待されているのであれば,その実現に一番近いところにいるのは政策決定者ではなく研究者なのかもしれません.
本日から開催のThe Forth GEOSS Asia-Pacific Symposiumに参加.インドネシア・バリ島にて.
科学的な会合というよりもプロジェクトの進捗報告や今後の進め方に関する議論を行う感じ.ビジネスミーティングですな.
さほど大きな会合ではないだろうと思っていたものの結構大きな会場で200人以上の参加者がいたのではないかと思います.二日目にはグループセッションが予定されていて,気候変動,二酸化炭素関連,水循環,生物多様性の4つの分野にわかれ,しかも多くのアジアの国々から参加者がいるということで,まぁ大きな会合になるのも当然かもしれません.
初日のWelcome Speechや基調講演,Generalな報告などで,GEOSSの活動状況とそれがどのように社会に貢献するかというお話でした.以前からGEOSS関連の会合には出る機会があったので,その意義などは知っているはずですが,再認識することや新しい活動や成果などについて知ることもありました.
出席している人間がその意義や新しい活動を知るようでは,一般の方々には当然知られていないだろうと思いますが,昨今の日本の科学界をとりまく状況を考えると,それをそのまま放っておくわけにはいかないと思います.国際的な大きな動きがある中で,そこに貢献している研究機関や省庁はそれをより社会に周知することが,人々の支持を得て,活動の継続につなげる必要があるはずですから.
個人や比較的小さなグループでの研究活動であればその程度でホームページでの情報発信など地味なやり方で良いかもしれませんが,GEOSSには文科省や環境省,JAXAなどの公的機関が積極的に進めている活動ですから,効果的な広報ができないものでしょうか.内容は一般の方々には良く分からないかもしれませんが,だからといって伝える努力を怠るのでは今までの科学技術の取り組みとかわりませんし.
最近は一般のニュースをわかりやすく解説するようなテレビ番組もあるし,そのような感じで普通に話したら専門的で良く分からない話になってしまうことをわかりやすく伝え,活動の意義を周知するようなことをマスコミがやってくれたりしないもんですかね.
午前中は流出解析関連の発表を聴きました.地球規模水循環とか温暖化といった話題が多いセッションで,面白かったのですが,モデル解像度や不確実性などが問題とされている分野なので,そのあたりの取り扱いが難しいだろうなという感じでした.私も温暖化実験の出力を使ったりしているので他人事ではありませんし,良い勉強にもなりました.
午後は私も発表.降水のセッションで,都市化の影響とか地形の影響といった話題が多く,私は降水予測のための衛星データ同化の話をしましたが,あまりなじみのない話題のうえ,発表時間もあまり長くなかったので到底十分理解して頂くには至らなかったようで.とはいえ降水予測は水分野では大事な話題ですし,これからも継続的に報告し続けて浸透させていきたいと思います.
最後は「水文統計・PUB」のセッションに.
その名の通り水文量の統計的取り扱いに関する話題で,かなり理論的というか,こういってはなんですが,ちょっと地味な感じの内容でした.
質疑応答では中央大学の山田先生が現在議論されている新しい治水方針との関連を話されて,そういう場で統計的な判断をどういう考えで盛り込んでいくかが大事だとおっしゃっていました.
座長の京大・防災研の立川先生からは,「昔は花形で発表件数も多かったのに,最近は少ない.水文統計は現在もこれからも大事なので,若い人にも取り組んで欲しい」とのコメントがありました.冗談まじりな感じだったので,会場からは笑いがもれましたが,確かにそうだなぁと思います.
私も最近ちょっとした統計処理をしなくてはならないことがあって,参考文献などをつまみ読みしていますが,最新の知識と技術とまでいかなくとも,基本的な知識を身につけないといけないなぁと思います.ただ,そうしたものは勉強して身につくというよりもデータをいじって経験を積むことで身につくものだと思うので,今がちょうど良い機会なのかもなぁとも思います.
ということで今年の水工も終わりました.
学会は最新の研究成果に触れるという意味でも有意義ですが,発表に関する議論の中から,ひとつの結果に対して色々な意見があるということを知ることは,考えを深める意味で非常に良いことだと再めて感じました.研究室で論文を読んでいるだけでは,著者の主張と自分の知識と考え方の中でしか理解が深まりませんから.
来年の水工もがんばって参加したいと思いますです.
昨年は金沢大学への異動前のバタバタで論文を投稿できず,一昨年は学会と現地観測が被ってしまって参加できず,その前はやはり何かの都合で参加できなかったので,4年ぶりの水工になります.久々に会える知り合いもいるだろうと楽しみにしていたのですが,出席者も心なしか少ないように感じますし,ちょっと顔ぶれも違っていたようで意外と知り合いは少ない感じでした.
それでも久々にお会いできる方もいて,近況の効果や雑談など楽しく過ごせました.
今日のセッションは私の研究テーマとは異なった内容のものが多く,個人的にはちょっと残念だったのですが,まぁそれは仕方ありません.明日は近いテーマの発表や面白そうだなと思うものもあるので,色々聴きたいと思います.
午後は早めに宿に戻ってちょっと発表準備などして,その後研究室の学生さんと夕食へ.なかなか学生さんと飲む機会も無いのですが,こちらも楽しく過ごせました.
学会自体というよりも,それに付随して楽しいことがあった感じですが,それもまぁ学会の恩恵ということで.
明日は発表ですので,しっかりがんばりたいと思います.
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